屋根のメンテナンス施工のひとつにカバー工法があります。選択肢のひとつとして、カバー工法について知っておくと自宅のメンテナンス時に適切な施工を選べるでしょう。今回は、カバー工法の特徴や塗装や葺き替えとの違い、カバー工法を選ぶ際に意識すべき注意点について解説していきますので、興味をお持ちの方は参考にしてみてください。
屋根のカバー工法とは?
カバー工法とは、古い屋根の上に新たな屋根材を重ねる施工方法です。主に、薄くて軽量なストレート屋根に対して行われる場合が多く、塗装だけでは対処できない修繕が必要な場合、カバー工法を選択できます。また、従来の屋根材すべてを取り替える葺き替えよりも手軽な工法として、カバー工法がよく使われるようになっています。
カバー工法・塗装・葺き替えの比較
屋根のメンテナンスの種類は、主にカバー工法・塗装・葺き替えの3つです。これらの工法を以下4つの面で比較し、どのような面で優れているかを次項で詳しく解説していきますので、選択の際の参考にしてください。
- 耐久性
- 費用
- 機能性
- 工期
耐久性
塗装の耐久性は、使用する塗料によってそれぞれ変わりますが、10年前後が一般的です。一方、カバー工法と葺き替えは20〜40年の耐久性があります。30年以上持つ塗料はまだ開発されていないため、メンテナンス時期を長くしたい場合は、カバー工法や葺き替えを選択するのがおすすめです。
費用面
次に、費用面について見ていきましょう。たとえば30坪程度の屋根の場合、主な相場価格は以下のとおりです。
塗装 |
50~70万円 |
---|---|
カバー工法 |
80~150万円 |
葺き替え |
100~200万円 |
カバー工法は、既存屋根材の撤去・処分の作業がないため、葺き替えよりも費用が安くなります。また耐用年数は、カバー工法と葺き替えではそれほど差がないため、費用面を見るならカバー工法を検討しましょう。
機能性
塗装の場合、塗料により遮熱性や防汚性などの性能がつく場合があります。また、葺き替えも選ぶ屋根材により性能が変わるので、よく吟味して選ぶことが重要です。
カバー工法は、既存の屋根に新しい屋根材を重ねることで、屋根に厚みが生じ、断熱性・遮音性が上がります。屋根材の種類を問わず、施工法により機能性が加わる点が、カバー工法とほかの施工との違いです。
工期
塗装と葺き替えは、おおよそ7~10日ほどの工期が必要ですが、カバー工法は1週間弱で完了します。カバー工法は、葺き替えに比べ既存屋根材の撤去・処分がなく、その分工期が短くなります。
また、塗装や葺き替えは、雨天などの天候によりスケジュールの変更が必要になることも珍しくありません。しかしカバー工法の場合、屋根の内部がむき出しになるタイミングがないため雨天でも作業ができ、雨が多い時期の施工もスムーズです。
カバー工法のメリット
カバー工法を選択するメリットをまとめると、主に以下4つが挙げられます。
- 雨漏りの根本解決ができる
- 葺き替えよりも安い
- 断熱性と遮音性が向上する
- 外観が美しくなる
カバー工法では、塗装では解決しきれない雨漏りの問題の根本解決ができます。塗装ではできない修繕を、葺き替えよりも安くできる点はメリットでしょう。
また、カバー工法の施工だけで副次的に断熱性と遮音性が向上される点も、ほかの施工にはない特徴です。さらに、劣化した屋根材に塗料を重ねる塗装と異なり、新しい屋根材に変わるためより美しい外観になります。各メーカーでは、さまざまな色やデザインの屋根材を販売しているため、カバー工法で気分を一新できるかもしれません。
塗装ができない屋根はカバー工法で対応
屋根材の中には、塗装ができないものもあります。その場合、メンテナンスの選択肢はカバー工法または葺き替えの2つになります。
屋根材の製品の中には、劣化すると層状に剥がれてしまうものも少なくありません。表面に塗装をしても、屋根材自体が剥がれるため、施工する意味がなくなってしまうでしょう。
また、屋根全体の2割以上が割れている状態の場合、屋根材の耐久性が落ちており、塗装してもすぐに割れなどのトラブルが生じます。このように、屋根材自体に問題がある場合、塗装ではなくカバー工法での対応がおすすめです。
カバー工法施工の流れ
カバー工法の施工は、一般的に以下の流れで行われます。
- 足場工事
- 既存の板金撤去・清掃
- 防水シート貼り
- 屋根葺き工事
- 足場解体工事
既存の板金撤去と清掃、屋根葺き工事は2〜3日前後で完了します。その前後の工程は、それぞれ1〜2日ずつかかるのが一般的です。
カバー工法で使われる屋根材の種類
カバー工法に使われる屋根材には、主に以下のような種類があります。ここからは、それぞれの屋根材の特徴について解説していきますので、参考材料のひとつとしてご活用ください。
- ガルバリウム鋼板
- アスファルトシングル
- 軽量瓦
ガルバリウム鋼板
ガルバリム鋼板とは、アルミニウム・亜鉛合金メッキを使用した加工金属です。一般的に、「金属屋根」と呼ばれる屋根材はガルバリム鋼板のことを指します。金属の中でもサビや腐食に強く、軽量なため地震の際の建物への負担が少ない点がメリットです。
耐久性は20~30年程度で、価格は屋根材の中では中間あたりに該当します。表面は平滑で、シンプルですっきりした印象の見た目に仕上がります。ただし板が薄いため、雨音が聞こえる場合もある点や色あせしやすい点はデメリットといえるかもしれません。
アスファルトシングル
アスファルトシングルは、ゴムシートにアスファルトや石材の砂粒を圧着した屋根材です。ゴムシートには柔軟性があり、複雑な形の屋根にも加工できます。石粒の色によるカラーバリエーションが豊富で、おしゃれな外観に仕上げられるのが特徴です。
また、ゴムシートの素材特性ゆえに、ひび割れたりサビついたりしない点もメリットです。さらに、表面には石粒が加工されているため傷つきにくく、防水性・耐候性にも優れています。ただし薄いシートのため、強風により剥がれや破れが起きる可能性が高い点はデメリットです。
軽量瓦
屋根材を重ね、重量が加わるカバー工法において、従来の重い瓦はあまり適した素材ではありませんでした。しかし、現在ではセメントを主成分とした軽量の瓦が開発されており、カバー工法にも使用できます。
従来の瓦と同様、厚みと重厚感があり、和風建築によく似合うデザイン性が特徴です。また、耐用年数は20〜40年ほどで、一度施工すれば長期間メンテナンスが不要である点もメリットです。ただし、費用は比較的高く、屋根の形状によっては施工できない可能性があることを頭に入れておきましょう。
カバー工法の注意点
カバー工法には多くのメリットがありますが、事前に把握しておきたいデメリットがあります。施工を検討する際には、以下のポイントを忘れずに検討しましょう。
- 下地まで傷んでいる場合は施工できない
- 住宅に負荷がかかる場合もある
- 雨どいの調整について頭に入れておく
下地まで傷んでいる場合は施工できない
カバー工法は、屋根の下地はそのまま残し、上に屋根材を重ねる施工方法です。そのため下地が湿気を帯びていたり、雨漏りが起きていたりすると、屋根内部に水分を閉じ込めることになってしまいます。
このような場合、中に溜まった水分や湿気で家を傷め、早期に再び葺き替え工事が必要となり、施工費用が無駄になってしまうおそれがあります。施工する屋根がカバー工法で対応できる状態かどうか確認するには、プロによる点検が必須です。信頼できる業者に連絡し、細部までしっかりとチェックしてもらいましょう。
住宅に負荷がかかる場合もある
カバー工法では、近年開発された軽量の屋根材を使用するため、極端な重さになることはありません。一般的な住居の場合、耐震性には影響を与えないとされています。
しかし、築年数の経過している木造住宅など、建物自体の強度が劣化している場合、重さの耐久性の問題からカバー工法ができない可能性もあります。この点についても、施工前の詳細な診断が欠かせません。
雨どいの調整について頭に入れておく
カバー工法で施工をすると、屋根の位置が少し高くなります。結果、屋根から流れる水の位置も変わるため、雨どいの調整が必要になることも少なくありません。雨どいの調整の要・不要については、使用する屋根材や家のデザインによってそれぞれ異なるので、見積もりの際に確認しておくと良いでしょう。
どんなケースがカバー工法に向いている?
ここまでで、カバー工法とほかの施工法の違いについて解説しました。塗装や葺き替えと比べ、何が適しているかは、住宅の状況や予算などによって異なります。簡単にまとめると、カバー工法に向いているのは以下のようなケースなので、自分の状況や希望と照らし合わせながら検討してみてください。
- メンテナンスの頻度を減らしたいとき
- 塗装でカバーできないほど屋根材が劣化しているとき
- 雨漏りを根本解決したいとき
- 葺き替えより費用を抑えたいとき
- 新しい屋根材で外観を一新したいとき
塗装よりも耐久性のあるカバー工法を選択肢のひとつに加えよう
カバー工法とは、既存の屋根材の上から新しい屋根材を重ねて屋根を修繕していく工法です。表面に塗料を塗るだけの塗装と違い、雨漏りの根本解決ができ、見た目も一新されます。
また、葺き替えと比べ既存の屋根材を撤去する作業が省かれるため、工期が短く費用も安くなるのがメリットです。塗装よりも長い耐久性を備え、かつ費用を抑えたい場合はカバー工法を選択すると良いでしょう。
「菊地塗装企画」は、一般住宅塗替え専門店として、各種塗装工事をメインに足場仮設工事や各種防水工事、外壁調査・補修工事などを行っております。環境・時代に沿った施工方法と最新技術に目を向け、より良い施工を提供いたしますので、屋根の施工についてお悩みでしたらお気軽にご相談ください。